快適キッチンを考える上で優先されるべきは「使い勝手」です。
使いやすさを科学することが「人間工学」の意味で、「使いやすさ」ってなに?というと、「人体のしくみ、感覚、心理動作にもとづき「心地よい」と感じることをいいます。少し難しい言い方になりますが「人間工学」からキッチンの動作空間を考えることで、機能的寸法がわかります。
生活行為に必要な空間の大きさを 平面の広さ(2次元)と高さ(3次元)の寸法で示したものが「動作空間」で その広さを考える基本になる寸法が ヒューマンスケールです。これは、自分の身長です。身長をもとに肩幅や手を伸ばす、曲げる、など、作業の領域範囲や目の高さ(アイレベル)や 重心の高さなどの 各部位のおよその寸法がわかるので、自分に無理なく使いやすいキッチンの高さや、ものを収納する位置の判断ができます。
両手を横に広げてみましょう。中指の先から先まで(左右方向に両手をのばした寸法)を指極といい、これが身長です。
ヒューマンスケールがご理解できたところで、身長をもとに各部位のおよその寸法を示したグラフがスライディングスケールです。
調理台の高さは 身長÷2+5センチ
立ち姿勢での作業点となる重心高さは 身長×0.55
目の高さ(アイレベル)は 身長×0.9
肩幅は 身長×0.25
しかし年齢によって差異が生じてくるので、実際はスライディングスケールにプラスマイナス3センチのゆとりをもって、考えます。
手の作業範囲は 手を前方にまっすぐ伸ばし、左右に回転させた時の軌跡を最大水平作業域といい、上下に回転させた時の軌跡を最大水平領域といって、無理なく動ける範囲になります。
キャビネットの引き出しを開ける時は引き出しが最大どの位まで引き出せるのかを考えて、キッチン前の通路幅も適正にとることも必要です。引き出しタイプのキャビネットは、収納量はアップしますが、その分 引き出すためには最低でも90センチの幅が確保することが大事です。冷蔵庫の扉を開閉するのも同じく90センチ、キッチンを二人ですれ違うには1メートル20センチは確保したものです。
自分にとって、使いやすいキッチンは、自分の身長にあった動作空間を確保することから始まります。
人は、上方にからだを伸ばすことが、かがむ姿勢よりもストレスを感じます。一番ストレスなく作業ができるのは床から1メートル20センチ~40センチの高さだと言われます。よく使う食器やツール、家電等はこの高さにあるとスムーズに作業ができます。
スムーズに作業ができるようになると、時間を効率よく使うことができ、たった5分の違いが、生活のゆとりと気持ちの余裕になります。
なにより、またキッチンに立ちたいな、今度はこんな料理に挑戦したいな、ケーキを焼きたいな~そんな ゆったり楽しい気持ちになることが、家族の笑顔につながります。
ぜひ、両手を広げて、自分のヒューマンスケールから、無理のない動作域が確保されているか、見直してみてください。
プロフィール
阿部 美子 / キッチンスペシャリスト
専業主婦を経て二人の子どもを一人で育てながら 水廻りメーカーのアドバイザーとして約10年、従事。「キッチン」の奥深さと魅力に惹かれ、キッチンスペシャリスト資格、(社) 日本ライフスタイル協会北海道唯一のリビングスタイリスト講師、CS(顧客満足クレーム対応)スペシャリスト 日本実務能力開発協会認定コーチの資格取得。(社) 日本デザイン学会 鈴木 昇氏に師事。「Happyキッチン講座」「リビングスタイリスト講座」「キッチンお悩み相談室」を随時開催。「お悩み解決!ココロもスッキリ!快適なキッチンから始まる楽しい暮らし、家族の笑顔を応援します」をコンセプトに始業。ララプラスキッチン代表。
イントロダクション
毎日つかうキッチン空間だからこそ気持ちよく心地よい空間でありたい。おかあさんのニコニコした顔から家族の安心が生まれます。おかあさんがいつもルンルン♪お料理をつくってルンルン♪おかたづけができる、そんな暮らしのヒントを女性のミカタ(味方&見方)で お伝えします。→Blog「キッチンアドバイザーのミセスのミカタ」