北海道の冬といえば、広い大地に真っ白い雪の絨毯が一面に敷き詰められているような風景や流氷などをイメージできますが、同じ北海道内でも地域によって、積雪量がシーズンで数センチのところから、10mに達するところもあるそうですよ。
今回は建築士の目線から、雪の多い地域での一戸建て住宅の設計で気を付けるべきポイントをお伝えします。
まず、敷地の大きさと建物の規模を検討し、敷地にどれだけ除雪作業に必要なスペースが確保できるか判断します。
敷地に余裕がある場合は庭や家庭菜園をつくり、そこを冬場に雪捨てスペースとして活用が出来ます。
お子さんと一緒に、夏は庭で水遊びや野菜の収穫、冬には雪遊びが出来ますね。
もし、敷地に余裕がない場合でも、雪を堆積しておく場所は必要です。
そのため、雪を捨てるスペースの確保ができない場合は、融雪装置に頼ることになります。融雪装置とは融雪槽、融雪機、ロードヒーティングなどの雪を解かす設備の事です。
この場合、敷地内に広い雪捨てスペースは必要ありませんが、電気や石油などのランニングコストが発生するため、使い方には注意が必要です。
また、敷地の向きも影響します。
道路が南向きになると当然、建物の正面は南向きになるケースが多くなりますが、南面は春先の雪解けの早さが違います。
私の自宅は南西向きなのですが、向かいの家(北東向き)より断然早く春がやってきます。
逆に自宅の裏は屋根からの落雪もあり、5月上旬頃まで雪が残っていることもありますが…。
敷地の中で積もった雪をどう処理するかの検討は、雪の多い地域ならではの住宅設計の際の重要ポイントです。
私たちは、建物を計画する時、敷地との関係と同時に、屋根の形状や基礎の高さなど建物自体の形も考えます。
そのとき同時に、雪捨て場だけでなく、屋根の雪をどう処理するかも考えます。
建物への負担(雪の重さや凍害など)を考えると、出来る限り屋根に雪を載せたままの状態にしておきたくはないのですが、敷地に余裕がない場合はそれを考慮してスノーダクトなどの無落雪屋根として計画します。
落雪が可能な場合でも、隣地からの距離や屋根の勾配もいろいろ検討しなければならないので、何でもかんでも落雪できれば良いと言う訳でもありません。
落雪・無落雪どちらを選択するにしても、最近は材料・工法・断熱なども性能が良くなり、寒い地域特有のトラブル「すがもり(すがもれ)」などの事象もあまり聞かなくなったので、設計の自由度もかなり幅が広くなりました。
適切な時期に適切な維持管理(点検や補修等)を行っていれば、建物の寿命は延びます。
人の健康診断のように早期発見、早期治療ができれば、かかる修繕費用も少なくて済みます。
そこで、建物の周囲を一年に2回くらい観察すると良いでしょう。点検時期は、雪が積もってしまうと外回りの点検はなかなか難しくなるため、積雪前の秋頃と、雪解け後の春先がおすすめです。
可能であれば、屋根の上も落ち葉が溜まっていないかなど観察できると良いですが、しっかりと安全に配慮したうえで行ってくださいね。
何か不具合があった際にいつもと何か違う?と気づけるように、定期的に確認をしましょう。
不具合が出た際に比較ができるので、観察のときに問題のなさそうな部分も含め、写真を撮って記録しておくと良いでしょう。
雪の多い地域は、家もそこで生活する人も雪の影響を受けます。
積雪量によって、その地域ならではの住宅設計の基準や工夫があります。
家を建築する際や何か不具合が発生した時は、ぜひ冬の北海道をよく知る建築士や工務店に相談してみてください。
また、家族を暖かく守ってくれる住まいについて、少しでも長く良い状態を保つことが出来るよう、定期的に点検をしてあげましょう。
プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士
株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。
イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。