第8回 後から後悔しないために、住まいの「断熱」のお話


雪も降りすっかり寒くなって毎日思うこと・・・「暖かい家に住みたいな~」でしょう。
暖かい家に入った瞬間、やっぱり我が家がいいな!と思える家で暮らしたいですよね?

断熱性能が高い建物は、室内の温熱環境を快適に保つことができます。
熱を外へ逃さないようにするだけでなく、外からの熱を遮断する効果もあるので、「夏涼しく、冬暖かい家」を実現することができるのです。
電気や灯油代などのランニングコストを節約できることもメリットでしょう。
2020年には「断熱性」「気密性」を一定の基準以上にしなくてはならない省エネ基準の適合義務化も始まります。

しかし義務化されても、設計図通りに施工されていなければ、本来の断熱性能が発揮できません。
今回は、そんなこれからの季節、家の性能で特に大事な『断熱』についてのお話です。

大事なことは「断熱材の厚さ」だけじゃありません

断熱の基本は、連続した断熱層(断熱材)で『室内空間をくるんでしまう』ことです。
断熱性能の高い住宅と聞くと、断熱材の性能や厚さが重要だと思われがちですが、断熱材が隙間なく充填されていること、つまり断熱層が途切れ目なく連続していることが最も重要となります。

断熱材に隙間が生じると、そこから熱が一気に逃げ、すきま風だけでなく結露の原因にもつながります。
木造住宅、特に在来軸組工法で建てられたものは、骨組みを施工し、窓・外壁などを施工したあとに床・壁・天井の断熱をするため、各部材の接合部で断熱の欠損や隙間が生じやすい構造となっています。
断熱が必要な室内部分と、必要としない部分(例えば1階に組み込み車庫などがある場合の車庫部分)を明確に分け、必要な部分を途切れさせることなく断熱材でくるむことが重要なのです。

断熱の工法

最近の断熱材は高性能で種類も多くなっています。
比較的多く使われているのは、グラスウールという断熱材です。柱の間にはめ込むように施工します。
床下にも同様の施工が多いです。
天井にはブローイング(細かい断熱材を吹き込む工法)を採用することが多いです。

工法によってコストにも差があります。ただし、安いからと言って断熱性能が低いわけではありません。
どの工法を採用するにしても、重要なのは適切な施工なのです。
新築だけではなく、中古住宅を購入し大規模修繕をする際も、ぜひ断熱に関して検討をされたほうが良いでしょう。

完成してしまった建物の断熱材の状態はほぼわかりません

天井裏や床下は建物の状況によって確認することができますが、仕上材を張り終わってしまった壁の中の状態はほぼ目視では確認することはできません。(最近はサーモカメラを使用してある程度、断熱の状態を確認することができます。)

もし、断熱に欠損部分が発見されても、床下や壁の断熱補強や補修工事は一旦既存のものを剥がして施工しなおすため、費用・工事期間がかかる工事となります。
特に、素敵な暖かい住まいを夢みて購入した新築住宅でそんなことがあったら、なんて考えたら心配ですよね。

その建物の設計者が監理(設計図書と照合し、工事が適合しているか確認すること)をしている建物であれば当然、断熱工事が適切に施工されているか設計者が確認をします。
しかし工務店任せで工事が進んでしまい、施工状況の確認ができないまま完成してしまっては手遅れです。

後から後悔しないために…

前述のとおり、施工が終わってしまうと確認が難しくなる断熱状況。
現場へ見に行けるようでしたら担当者に工事の工程を確認し、ご自身で確認を行うと良いでしょう。
確認へ行けない場合は現場監督の方に写真を撮っておいてもらうようお願いしてみると良いかもしれません。

ただ、断熱材の施工には細かな基準があり、正しく施工されているか見てもわからない可能性もあります。
そんな時はあなたに代わって、施工状況を確認してくれる中立な立場の専門家に見てもらうことをお勧めします。
断熱工事に限らず、建物全般にわたって施工状況を第三者の目線で確認してくれる専門家がいてくれると安心ですよね。
検査費用は発生しますが、完成後に不具合等が発生して補修や修繕をすることを考えたら、決して高い費用ではありません。

いかがでしたか? いかに快適な環境で暮らすか。住まいの断熱は重要な問題です。
マイホームが完成した後で後悔しないために、工事中から断熱チェックを行いましょう。

大林 厚志

プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士

株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。

イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。