ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅建築に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が第三者的な立場から専門家の目線で、住宅の劣化状況や欠陥の有無、あるいは改修が必要な箇所、時期やおおよその費用等のアドバイスを行う専門業務です。
基本的に目視による調査、簡易計測器を使用するなどの一次診断になります。(非破壊検査)
病院で受ける健康診断だと思っていただけると良いかもしれません。人も家もちゃんとコンディションを把握してなくちゃいけないってことですね。
必要に応じて、その分野の専門機関へ精密検査=二次診断を勧めることもあります。
では、どんな時にインスペクションをするの?と言う事で主に依頼の多いものに関して解説をします。
いわゆる中古住宅の売買前に行うものですが、居住中のご自宅の点検をご依頼いただくこともあります。
建物は完成した瞬間から劣化がはじまります。そのままにしておくと劣化が進む一方です。
ですから、建物のコンディションをちゃんと把握して、適切にメンテナンスをしなければなりません。
特に何十年も経過した建物を購入するとなると尚更心配な部分が多々あるでしょう。そんな不安を少しでも解消し、良質な物件を購入するためのお手伝いをします。
物件の状況によっては確認できない部分もありますが、建物の外周り、屋根、内部各室、床下、屋根裏、設備等を目視で確認し、必要に応じて触ったり、臭いを感じたり、道具を使うなどして診断します。
中古住宅で多い不具合は、屋根の劣化・基礎コンクリート部分の劣化・床の傾斜などです。
屋根の劣化は、屋根材のふき替え、あるいは塗装で補修できますが、基礎コンクリートに重大なひび割れが確認され床の傾斜が同じ原因によるものと推察された場合は、補修が難しい状況です。
建物そのものが傾いている可能性があるということです。
建物の仕上げ部分は、費用は掛かりますがキレイにすることは十分可能です。
しかし、地面の下(建築のための支持地盤)の問題、建物の骨組み(構造体)の劣化などは基本的には建替を考えることになります。
ホームインスペクションでは、そう言った内容から、ドアの取手にガタつきがあります。とか照明器具が点灯しませんでした。など細かな事もチェックします。
…希に床下に〇〇が置かれていました。なんてことも!コワッ!!
工事中に何かトラブルがあり建築会社を信用できなくなってしまった、施工精度の確認のために第三者にチェックしてもらいたい、等の理由から、建物の引渡し前に依頼されるケースが多いです。
建築途中で施主と施工会社でどんな打合せが行われ、どんな説明を受けていたのかはわかりませんが、先日調査のため伺った物件では、明らかに施工会社の現場担当者か営業担当者の説明不足が原因と思われる認識違いがありました。
現場の状況と一般的な施工手順の説明をしたところ、きちんと理解していただきました。
引渡し前と大きく違うのは、工事の進捗状況に応じて現場の確認をすることです。
施工チェックの回数、建物の規模により費用が変わりますが、完成してしまってからでは確認できない部分をインスペクターがチェックします。
ホームインスペクションは中古住宅購入の時だけに行うものと思われがちですが、このように新築や新築工事中、自宅のトラブルや耐震診断まで、ニーズに合わせて様々な形で不動産取引や建物の維持管理のためのお手伝いをします。
ホームインスペクターを選ぶポイントは「取引に利害関係のない第三者で、実績の多い、建築のプロ」を「自分自身で調べて選ぶ」こと。
建物の所有者(売主)、もしくは販売会社(不動産業者)の『お知合い』のインスペクション会社が診断をすると、建物に何か不具合が発見された場合、事実を正確に伝えてくれるか?
その後のリフォーム工事を受注するためのお手盛りインスペクションなど、正しい診断結果とならない可能性もあります。
また、今年4月に宅建業法の一部改正があり、既存住宅の売買に関して媒介契約時に宅建士がインスペクションの説明をしなくてはならなくなりました。
この宅建業法に絡む建物調査や、入居後の万が一を防ぐ「瑕疵(かし)保険」の検査などは、「インスペクション」と呼ばれるため混同されがちですが、国で定めた最低限の検査であったり、保険加入のための事前検査であるため、ホームインスペクションとは違います。
ホームインスペクションをお考えの際は、ぜひ不動産業者へ任せっきりにするのではなく、ご自身で調べ、納得のできる会社へ依頼をすることが大切です。
プロフィール
大林 厚志 / 一級建築士・一級建築士施工管理技士
株式会社北工房執行役員、一級建築士。現場監督経験後、設計事務所にて住宅・商業施設等の設計・監理業務に携わる。現在はホームインスペクター(住宅診断士)や住宅性能評価員としても活躍。住宅関連セミナー・建築士資格試験予備校等、講師経験多数。
イントロダクション
「家」は生活に欠くことができません。家庭環境、転勤、資産や目標など「家」を求める理由は人それぞれですが、誰もが幸せになりたいという夢をお持ちです。北海道の建築に携わって30年。新築設計だけでなく、ご自宅のトラブルなども含め、さまざまな「家」に関わるご相談を承ってきました。そんな私たちだからこそお伝えできる「幸せになるための家づくり」とは。