これから住宅の取得やリフォームを計画されている方には無縁の話題のようですが、私の事務所に離婚の相談でお越しになるご相談者のほとんどは、「まさか、自分が離婚することになるなんて」と口を揃えておっしゃいます。確かに、誰しも、結婚するとき、子どもが生まれたとき、そして住宅を取得するときなどの「ハレ」のときには離婚など夢にも考えていないものですが、予期せぬことが人生です。特に、北海道の離婚率は全国レベルでも決しては低くはないと言われていますので、”転ばぬ先の杖”の心がけが肝心です。
その離婚の際になかなか解決困難な問題となるのが、住宅ローンの処理です。結婚して、子どもが生まれて・・・順調に結婚生活を営んでいる若い夫婦が次に計画するのがマンションや一戸建ての購入です。離婚と同時に金銭の貸し借りなどを精算することは基本的には二人の話し合いでできますが、住宅ローンについては、ローンを完済するなどしない限り、二人の間で取り決めをしたとしてもローン会社などに対して影響するものではありません。
例えば、夫が借りた住宅ローンについて、奥様が連帯保証人になっているご夫婦が離婚の際、「住み続ける夫がこのままローンを負担する」と決めたとしても、もしご主人が後からローンの支払いができなくなれば、住宅ローン会社は、連帯保証人の奥様にも請求をすることになるでしょう。奥様は、離婚後、ご自分がもはや住んでいない住宅のローンを請求されるのですから、「離婚するときに夫が責任をもって支払っていくことに決めていた。」と言いたくなるものです。しかし、この主張は住宅ローン会社には通じないのです。というのは、この連帯保証契約は、住宅ローン会社と奥様との間の契約なので、主債務者(主な債務者)であるご主人と連帯保証人の奥様との間でその負担割合や支払い方法について取り決めをしたとしても、住宅ローン会社には影響を及ぼさないからです。そうすると、せっかく離婚して第二の人生を歩もうとしていたのに、その計画が大きく狂ってしまうことにもなりかねません。
離婚に際して連帯保証人を外してもらいたいというご希望を持つ方も多いのですが、住宅ローン会社からすれば、これまで2つのお財布(夫の収入と妻の収入)をアテにしていたのに、二人が離婚したからといってお財布を1つにすることになかなか同意するものではありません。一般的には、離婚する妻に代わってほかの人が連帯保証人になるほかないのですが、新たな連帯保証人候補者が審査に通るかどうかという問題に加えて、代わりになる人を探すには離婚しようとしているのに夫婦の協力が不可欠というのも難しい点です。
住宅ローンやリフォームローンを組む際には、収入や借入額によっては夫婦二人が連帯保証人にならなければ審査が通らないケースもあるでしょうが、もしそのようなケースでなければ、夫婦二人ともローンの全責任を引き受けることについてもう一度よく検討してみてはいかがでしょうか。
だんだん夫婦で新居を購入することに不安を感じて来てしまいましたか?大丈夫!要は、夫婦円満でいればそんな問題は現実化しないのですから、夫婦円満状態を永続させる努力をお互いに怠らなければいいのです。
プロフィール
林 眞紀世 / 弁護士
札幌弁護士会に所属する弁護士。民間航空会社勤務を経て、平成15年から弁護士に登録。平成18年10月からはパークフロント法律事務所を開業。当時は、北海道初の女性弁護士2人の共同法律事務所だったことが話題に。一般の方から企業まで、幅広く一般民事、企業経営に関する事件、親族間の事件などに取り組んでいる。
イントロダクション
法律は難しいとか、法律事務所は敷居が高いなどとよく言われますが、「難しいこともできるだけわかり易く」をモットーに日々取り組んでいます。このコラムでは、住宅や不動産などにまつわる法律問題にわかりやすく触れていきたいと思います。