長くつきあうマイホーム。年齢を重ねて、身体に変化があった時、危険の少ない作りにしたいものです。今回は引き続き、色彩と『安全』のお話になります。
前回(第31回『色彩と安全①』)お伝えしたように、老化によって水晶体が濁り、黄変していきます。視界の変化の様子は、『薄い黄色のサングラスをかけているような』と表現されることも。視界が黄色っぽく見える現象について、例を挙げてお話ししていきたいと思います。
黒地に書いた字に、薄い黄色を重ねると…
白字に書いた字に、薄い黄色を重ねると…
極端な例ですが、「見えにくくなる色」がわかるかと思います。
紫や青は見えにくくなりやすく、赤などは比較的、認識しやすい傾向があります。
なによりも重要なのは『明度の差』です。
黒字に白、黄色、白字に黒など、明るさの差がはっきりしたものの方が、黄色いフィルターを通しても見やすい傾向があります。
上から見た階段(階段を下りる状態)をイメージした図です。
階段の転倒の多くは、下りる時に起こります。
こちらに、薄い黄色を重ねると…
しかし、ここに滑り止めも兼ねたストッパーを貼って見ると…
ちょっとしたことですが、安全度が変わってきます。
特に朝方や夕方、少し暗い状態ですとなおさら、境目は曖昧になるものです。
色の種類(赤、青、など)を見分ける機能は、年齢と共に落ちてきます。明るさで差を大きくつけることが、安全管理の上で重要なことです。
明度差は、「見てわかる」もので、差の大きな組み合わせは、白と黒に代表されますが、さすがに白黒だけでインテリアをまとめるのは難しいですよね。
落ち着きのある明度差の出しかたとしては「ダークブラウンとアイボリー」など、同じ系統の色で差を出すこと。オレンジみの強い茶色は、少しオレンジみのあるアイボリーを。茶色にもいろいろな種類がありますので(第19回『茶色を極める!』)、同じ系統でそろえたり、柄の一部に使ってみたり、と工夫をするとよいでしょう。
背の低いチェストやスツールなどは、つまずきや、衝突の危険を避けるため、床や壁と明度差をつけたファブリックで覆うのも一案ですね。
いかがでしたでしょうか?
色彩と安全についての話題でした。家を建てた時から、未来に向けて身体の変化は始まっています。
長く住む家とは、安全につきあいたいですね。
また、おじいちゃん、おばあちゃん世代の家で「危ないな!」と思うものがありましたら、明度差をポイントに、色彩計画を見直してみるのもよいのではないでしょうか。
プロフィール
アズマ レイコ / カラーコーディネーター
2003年に函館でカラーサロンをオープン。パーソナルカラー・パーソナルスタイル診断の他、色彩心理のセミナー、講座を開講。結婚後の転勤で、2007年から札幌での活動を始める。『HappyColorLife』主催。AFT1級カラーコーディネーター。2児の母。
イントロダクション
色彩の知識を、楽しく!わかりやすく!使える形で!お伝えすることをモットーにカラーコーディネーターとして活動しています。色彩は生活に密着した、生活を彩る要素です。このコラムでは、生活に役立つ色彩のマメ知識をお届けできればと思っています。楽しく賢く色彩のパワーを利用してみましょう!